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5話 検索窓

Author: 九重有
last update publish date: 2026-06-25 07:46:48

鴻上拓哉

検索窓に並んだその名前を、愛梨沙はしばらく見ていました。

画面に映っているのは、ただの名前です。

けれど愛梨沙には、その4文字が男の輪郭そのもののように見えました。濃紺のスーツを着て、白い小箱を持ち、結婚指輪をしたまま赤い爪の女の隣で困ったように笑っていた男。

拓哉くん

麻里亜はそう呼んでいました。

けれど、画面の中では鴻上拓哉でした。

漢字になると、急に遠い人になる気がしました。声に出せば甘く崩せる名前なのに、文字にすると冷たく整って、手の届かない場所へ置かれたみたいでした。

それでも、その字を知っていたのは偶然ではありません。

愛梨沙はラウンジへ入る時、入口の小さな台を見ていました。

黒い革のバインダー

白い予約表

細い罫線

そこに、いくつかの名前が並んでいました。

スタッフが案内のためにページを開いた、ほんの一瞬です。見るつもりなんてありませんでした。けれど、見えてしまった文字は目の奥に残りました。

15時00分

鴻上拓哉様

2名

窓側席

その文字は、すぐにスタッフの手で隠れました。

けれど遅かったのです。

鴻上拓哉

拓哉くんではなく、鴻上拓哉。

男の名前は、ちゃんと
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